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シュワルツコフ ヘンケル株式会社 代表取締役社長 足立 光
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スペシャルインタビュー

シュワルツコフ ヘンケル株式会社 代表取締役社長 足立 光

シュワルツコフ ヘンケル株式会社
代表取締役社長 足立 光


1968年アメリカ・テキサス州オースチン生まれ。
一橋大学商学部卒業後、プロクター・アンド・ギャンブル・ファー・イースト(日本)に入社、P&Gにおける日本人として初の韓国赴任を経験。
その後、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン、ローランド・ベルガーを経て、ヘンケル ライオン コスメティックス(現シュワルツコフヘンケル)に転じ、2005年4月社長就任。
赤字続きだった業績を急速に回復させ、2007年3月よりヘンケルジャパン取締役シュワルツコフ プロフェッショナル事業本部長を兼務、現在に至る。
また一方で、主に消費財メーカーの20〜30代の若手を対象に、勉強会兼同業種交流会(FMCGジャパン)を主催する等、幅広くご活躍中。

'09年 5月 シュワルツコフ ヘンケル株式会社 代表取締役社長 足立 光氏、弊社代表取締役 神川 貴実彦 対談

事業会社、戦略コンサル、そして消費財メーカー代表取締役へ

『まずはこれまでのキャリア・ご経歴を簡単に教えてください。』

大学卒業後、当時は日本で知名度もまだ低かったP&Gに入社し、約6年間マーケティング部に在籍しました。その後、日本人として初めてP&G韓国に赴任しましたが、そこで思うことがありまして、コンサルティング業界に移りました。それが1998年の話です。
当時、コンサルティング業界の中ではまだ有名ではなかったブーズ・アレン・アンド・ハミルトンに入社し、消費財業界のプロジェクトを中心に経験を重ねました。その後上司ともどもローランド・ベルガーに移りました。結局、計6〜7年程度コンサルティングをやりまして、2004年に現職のヘンケル、実業界に戻って現在に至ります。

『現在のお仕事の内容について、多岐に亘るとは思いますが、教えていただけますでしょうか。』

現在はドイツの化学メーカーであるヘンケルの日本の化粧品事業全体のカントリーマネージャーをしています。私が担当する事業部には大きく二つの部門がございまして、一つはドラッグストア等の一般流通向けのヘアカラー・ヘアケアを中心としたリテール事業。もう一つはヘアサロン向けの業務用ヘアカラー・ヘアケアを中心としたプロフェッショナル事業です。

リテールの方はシュワルツコフヘンケル梶Aプロフェッショナルのほうはヘンケルジャパン鰍フシュワルツコフ プロフェッショナル事業本部、この二つの責任者、要するに日本のヘンケルのコスメティック事業の責任者をやっております。

『ヘンケルは世界的にはかなり大きい会社だと思いますが、日本では正直なところあまり知らない方もいらっしゃるかもしれません。世界的にはどのような会社のでしょうか?』

日本では、ヘンケルと聞くと「刃物の会社?」とよく勘違いされますが、あれは「ヘンケルス」というまったく別の会社でして(笑)。ヘンケルはドイツの花王みたいな会社だと思って頂ければと思います。
洗剤の界面活性剤の技術を基にして色々と商材を広げてきた会社で、世界的には化粧品では4~5位、ヨーロッパではヘアケアが圧倒的に強くてロレアルやP&Gと覇権を争っています。日本ではまだあまり知られていない会社ですが、ドイツでは昨年フォーチュンという雑誌の「ドイツでもっとも尊敬される企業」に選ばれるなど、ヨーロッパではかなり著名な会社です。

『日本においてもこれからどんどんと大きくされていくわけですね。』

私はP&G、ブーズ、ベルガー、ヘンケルというキャリアを歩んできたわけなのですが、それらの会社に一貫した共通点は「(その当時は)日本では無名」、ということなんです。

『なるほど』

今ではどの会社も有名どころだと思うかもしれませんが、私が大学卒業当時の80年代後半はバブルの絶頂期でして、周りの人間がみんな銀行・証券や商社に行く中で、メーカーでしかも外資系に就職する人間はあまりいませんでした。P&Gは当時ちょうどやっと黒字化した頃でしたし。基本的には世界的に有名だけど、日本では無名の会社に行こうと思っていましたのでP&Gに入りました。
実はブーズも同じ理由でして、コンサルと言えば、90年代初頭はマッキンゼー、BCG、ベインの名前くらいは出てくるのですが、ブーズは出てこなかったですね。世界では5大コンサルティングファームと言われていたのですが。
ローランド・ベルガーはもっと小さくて、当時は二十数人しかにいなくて、本当にこれから日本での事業を拡大しようというところでしたし。今は百人近くになりましたが。
ヘンケルもお話したとおり、うちの親でも知らない会社ですし(笑)。このように、ずっと一貫して「日本では誰も知らない会社、世界的には有名だけど日本で知名度の低い会社」でキャリアを歩んで来ております。

自分が何か貢献して、ビジネスを大きくしたり成功させたりしたほうが自分としても成長出来る

『お仕事を選ばれる基準として一貫した明確なコンセプトをお持ちのようですが、どうしてそのように考えるようになったのですか?』

私はそれなりに自己中心的なので・・・(笑)。自分が何か貢献して、ビジネスを大きくしたり成功させたりしたほうが、既に成功している会社に行くよりいいだろう、そういう理由ですね。そのほうが「面白い」から!
実際、P&Gでも私が入社した90年と私が辞めた98年では全然違っていて、当時は本社ビルも無くて小さなところで間借りして、小所帯でやっていました。組織が小さいと新人社員の頃から色々と仕事がふって来て、責任ある仕事を任せてもらえるんですね。ところが会社がどんどん大きくなってくると、組織が細分化されてきて、昇進していってもあまり責任範囲は変わらない、というようなパターンになってしまいました。
ですので、やっぱり「成長している会社」・・・と言うか、少し傲慢な言い方かもしれないですが「成長させることができそうな会社」に行ったほうが、自分としての成長も大きいし、責任範囲も大きいし、自由度がある、と思います。
ヘンケルに来た理由ですが、当時私は基本的に「化粧品や食品などの消費財業界」で「日本企業の海外進出、または外資系企業」で「日本でうまくいっていない、失敗している会社」を次のキャリアとして考えていました。「消費財業界」についてはある程度の知識や経験をP&Gやコンサルで積んでいたので、全く知らない業界より会社に貢献できるまでのスピードが早いだろう、という理由です。外資日本法人か日本企業の海外進出かというところでは、私がずっと外資できましたので、そのほうが外人と渡り合うという私の経験も生かせるかなと。「失敗している」というと非常に語弊があるのですが、失敗している会社っていうのは、結構色々と自由に変えることができるんですね。せっかく自分が入ったのに、それまでの既存の会社のやり方をフォローするのであれば、あまり自分が参画した価値がない、と。自分としてはコンサルも経験してきたことですし、ターンアラウンドしようと、いうことでヘンケルに参りました。

『かなり明快なお考えをお持ちなんですね。』

いつも「明快に聞こえる」ように話しています(笑)。

コンサルティングファームでの経験

『P&G、ブーズとベルガー、そしてヘンケルとお仕事をされて、前の二つのコンサルティング経験は、現在のお仕事にどのように役に立っているのでしょうか?』

コンサルティングというのは私の中では「勉強する場」という機会でした。MBAに行かずに(私は当時マーケティングにいたので)「マーケティング以外のファンクション」と「消費財以外の業界」とを両方一度に短期間で学べる、と思って飛び込みました。ただ自分としてコンサルで得た一番大きいことは、実は「気合」なんです(笑)。やっぱり、かなり知的にチャレンジングな環境でした。入社して数ヶ月、数年の若造が上場企業の経理部長とキャッシュフローの話とかするわけですよ。それってこう、なめられてはいけないし、仕事なんで負けちゃいけないし、そうすると勉強はするし、負けないように一生懸命仕事しますよね。短期間、数ヶ月という単位のプロジェクトで、かならず「結果」を出さなくてはならない。それはかなり大きなチャレンジでしたし、正直、このチャレンジを乗り越えたのであれば「どんな業界でもある程度やっていけるかな」という「気合」というか「集中力」が、コンサル時代に得た一番大きいものでした。
知恵とか分析の手法とかはある程度本を読んで知っていたので、それよりもやっぱり「これだけ仕事をするんだったら誰にも負けないだろう、多分大丈夫だろう、ということに関しては自信を得ましたし、その「気合」というのが一番大きかったと思います。

『面白いですね。あんまりコンサルで「気合」というのは・・・(笑)。』

そうですね。たぶん普通の流れですと、「分析手法」とか「体系的な経営知識」・・・とかなんとかと言うような話になるのでしょうけれど、分析手法や知識的なものなんていうのはMBAでも学べますし、書店に行けばある程度本にも出ています。私の中で大事だと思うのは、今の仕事でもそうなんですが、たとえば新しいポジションに3月1日付で着任して、翌月の1日には、どこにどんな問題があって、何をどう変えていくか、大体出来ていなければいけないわけですよ。こういった仕事は分析云々というよりは、「何をどうするべきか、あたりをつけて、実施しながら更に修正して、結果を出していく」ということなんで、必要なのは分析じゃなくて「結果」なんです。分析だけでは、何もしていないのと一緒です。「結果」が無いんですから。1ヶ月でまとめるというスピード感はもしかしてコンサルでも学んだことかもしれませんが・・・、私はコンサルに入る前から、そうやってきましたしね(笑)。

エキサイティングで、イノベーティブで、そして最も成長している会社へ

『ありがとうございます。今後の御社の方向性や足立社長ご自身の目標などをお聞かせください。』

まず、会社としてですが、現時点ではいたずらに規模拡大を目指すのではなく、「業界の中でもっともエキサイティングで、イノベーティブで、そして最も成長している会社」という位置付けになりたいな、と思っています。正確には弊社内では、"exciting", "innovative"、"fastest growing"の3つを掲げているんですが、特に3つ目の"fastest growing"が、弊社にとって最も大事な他社との違いだと思っています。リテールでもプロフェショナルでも、どちらの業界でもうちよりももっと規模の大きな会社があります。私は大きいのがいいとは思っていなくて、一番元気があって伸びている会社、そういうイメージがほしいし、そうありたいと思っています。特にこの時代、どこも売上が伸び悩んでいる中で、「成長している」というのが何よりも一番良い会社であることの証明だと思うんですね。成長すると色々といいことがあるじゃないですか、社員に対してもお客様に対しても。
"innovative"というのはまさに文字通り「革新的」という意味でして、リテールもプロフェッショナルも市場では我々はチャレンジャー的なポジションなので、他の競合企業と同じようなことをしては絶対勝てません。ですので、他の会社が「あっ!」驚くような、業界に新風を吹き込むような先進性のあることをしていこうと思っています。
実際そういう楽しいことをする会社なんですよ。グローバルでのミーティングでは、3日間どこかのリゾート地で会議をする、これはどこもあると思いますが、最終日は夜12時から朝5時までダンスパーティをするんです。そういうことをする文化っていうのはあまり他の日本企業ではないと思います。

『面白いですね。今でも・・・ですか。』

そうですね。ただ日本では夜12時以降、ダンスパーティができるところってあんまりないですが(笑)
ただ、日本でもプロフェッショナルのほうではそういうことを積極的にやっておりまして有名なDJを呼んで、夜10時から朝4時までクラブイベントを催したりもしています。

『そうなんですか。社長も参加されて・・・ですか?』

もちろんです。私は夜型の人間なので(笑)。

社長の自分が居なくても強い組織をつくるというのが社長の役目

『ありがとうございます。足立社長個人の目標につきましてはいかがでしょうか?』

正直、あまりロングタームの目標は言わないことにしてます。
いつまでにこういう風になっていたい、というのはありますが、やっぱり大事なのはその場その場できちんと結果を出して、それを積み重ねていくことだと思っているので、まずはこのヘンケルという会社をもっと日本で成功させたいと思っていますし、私がいなくても成長していけるような会社にしたいと思っています。私はオーナーでなないので、何年後かわかりませんが、どこかのタイミングでどこかにい行かなくてはならない、その時に慌てなくて良いように、安心して出ていける会社というのが一番強くて良い組織だと思います。究極的には社長の自分が居なくても強い組織をつくるというのが社長の役目だと思っています。それが実現できればなぁ、と思っています。

「もっとこういうことがしたい」とか「こういうことを見つけたい」などを明確にしておくことが大事

『最後になりますが、今後のキャリアを考えているビジネスマンにメッセージをお願いします。』

転職というのは実は成功する人もいますが、失敗する人も多いです。これは、転職だけに言えることではなくて全ての意思決定についても言えることなんですが、「前向きである」ことが大事だと思います。今の会社や上司がなんとなく嫌だからとか、もっとましなところがあるんじゃないか・・・とかいう後ろ向きな動機で転職すると、結局、転職理由が「自分」じゃなくて「人」のせいになってしまいます。つまり、「周りの環境」のせいだったりするわけですね。そうすると、結局転職しても、自分をうまく処遇してくれないとか、思ったような仕事がこないとか、またそういった「人」や「周囲の環境」を理由にまた不満になって不幸せになっていきます。ですので、あくまでも大事なのは「自分」を軸において転職を考えることですね。例えば、自分はここでは満足していないけれど、「もっとこういうことがしたい」とか「こういうことを見つけたい」などを明確にしていくといいのかな、と私は思っています。

『ありがとうございました。』

シュワルツコフヘンケル株式会社
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